白黒ノ時雨 -小説館-

自作・二次創作小説館です。

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『炎の山の狩人たち』01

モンスターハンター二次創作小説『炎の山の狩人たち』
Chapter1-1









“霜月の災厄”、そう呼ばれた年から、8年が経とうとしていた。

8年前のあの日、ボルカ村には何百年も降りもしなかった雪が降った。




「クロロロロロ・・・クロロロロ・・・クロロロロロロ・・・・」

耳元で奇妙な声が響き、静寂は暗闇と共に去っていった。

少年は目を醒ます。

毎朝のように目覚まし代わりに独特の鳴き声で朝を知らせるのは、少年のペットだった。


少年の名はジン。ジン・ロックフィールド、今年18歳になったばかりの“狩人”だ。

青鈍(あおにび)色の澄んだ瞳に、18にしては大人びた聡明さを持つ、端正な顔。

それはもし仮に少年が“狩人”としての人生をこの若さで送っていなければ、別の有意義な人生を保障されてもおかしくないほどなのだ。


―――狩人。

名の通り、狩る、人。狩る対象、それは“竜”だ。

この世界は竜に満ちていた。

生い茂る密林も、広く果て無き海も、砂塵巻上げ流れる砂漠も、血の煉獄が灼熱を逆巻く火山も。

すべてが竜に満ち、人間は自らを守るため狩人となった。




Chapter1-1『青鈍の目』




木製のベッドを軋ませ立ち上がると、眠気を物ともせず早々と衣服を着替える。

それに伴って揺れる、母ゆずりの艶のある青みがかった黒髪。

俗称では『レイヤーカット』などと呼ばれる、若者に人気の髪型についた寝癖を直すと、ジンは壁に立てかけてあった自らの武器を手に取る。

少年の手首ほどもある刃と柄(つか)を持ち、光を受けるだけで紫電を放つ。

当然ながら、この武器が少年が竜と戦うための道具であり、少年の命を預かった相棒でもあった。

太刀。

東方の人斬り包丁から発展したといわれる、切れ味に全てを注いだ刀。



ボルカ村はその名の由来を示す火山の山々に囲まれた、東方のハンターの村だった。

村から周りを見渡せば、一方は開けた海。そして残りは全てが煙の山。

一見すれば火を噴き続ける山に囲まれ、竜の襲撃以前に危険な村と思われがちだが、その実火山による影響はほぼ無い。

“ほぼ”というのも、噴煙や落石、ガスやマグマといったものの影響を受けるわけでもないが、雨が降れば状況が一変してしまう。

黒い灰を含んだ雨が降れば服は真っ黒に。

悪いところといえば、それだけだったのだ。



ボルカ村から望む山の中でもひと際大きいのがレンスボロック山だ。

村から火口を挟んで向かい側、マグマの川が流れる世界が『火山地帯』と呼ばれ、ハンターの職場となっている。

『カブレライト鉱石』という鉱石を多く保有した大地は堅く、そして熱い。

異様なまでの強度とを延性を持つこの鉱石が産出できたからこそ、ボルカという名は太刀と共に有名だった。


ジンはあくびをしながら窓を開けた。が、その眩さに目が眩む。

長雨の後の蒼天はむこうのレンスボロック山まで続いていた。

黒い雲は光を通さず、それだけで生命力が奪われていくほどだというのに、狩人にとっての雨は無職を意味する。

勿論例外もあるが。


「1週間ぶりのいい天気だな・・・狩り日和ってやつか。」

独り言を呟きながら、カエルのレンコをなでている。


独り暮らしのジン。寂しくはない。

彼の両親もハンターで、ボルカ村どころか東方でも彼らを知らぬ狩人はいない。

両親に対する強い憧れが、幼きジンに狩人の道を選択させた。

否、それ以上の過去を経て、ジンは狩人となった。





自らの誇りである両親は、ほとんど家に帰ってくることがなかった。

「仕方ない」と寂しさを胸中に閉じ込めては、ジンはレンスボロックの火を眺めていた。

狩人を名乗る以上、生きるためには狩るしかないのだ。

幼いジンには解っていた。

両親が常に死と隣り合わせの仕事をしながら、自分を育ててくれていることを。

8年前。ジン、10歳。



そんな中、優しい両親の元に届いた凶報。

『霜月の災厄』と呼ばれた悪夢は、北方の地を襲っていた。

当然、狩人としてすべき事を全うするのが当然であり、勿論ジンの両親は北方へ向かった。

手を振るジン。その手に落ちた冷たいモノ。

「何だろう?これ。」

それが何か解らなかった。ボルカ村の誰にも。

ボルカ村に降ったのは、最後何百年前かに降った雪だった。


両親が2日の道程を要したどり着いた廃墟。

ハンターの骸。ガラクタの様に砕かれた武器、ハンターそのものの四肢。

色を失ったその元・街の名は北方都市『カリカレチャ』。

かつての繁華の道に浮かぶのは苔むした超巨大な物体。

―――古龍だ。

恐怖に寒さを忘れたのに、ジンの両親・ザフィリオとユウカの身は臆病にも震え始める。

仕組みを考える余地も無い状態で、それは常に宙に浮いている。

風船?空を浮く島?

いや、蛸だ。見た目は蛸のようで、とても龍には見えない。

巨大な浮き島のような背には苔や木が生えていて、まるで南の大地がそのまま空へ飛び上がったようだった。

背に茂るものは『龍苔』や『龍木』などと呼ばれ、神聖化され崇められていた。

浮岳龍と呼ばれたその古龍は、突然やってきて街を破壊した。

想像以上の“災厄”が人間を絶望に陥れた。

カリカレチャはその後『災厄の街』という名を着せられ、温厚な市民の全てが死んだ。

世界各地から集められたハンターの多くが、命を失った。

そしてその中にはジンの母親も含まれていた。


有名だったはずの両親。

巨大な古龍には叶わなかった。

何時間も、何時間も斬り続ける父。射続ける母。

父を襲う衝撃。視界は赤、白、黒と変化、意識を失う。

ジンの父親が目を醒ます。しかし暗闇はそのままだった。

今にも浮岳龍の巨体に押しつぶされようとしていたのだ。

しかし、逃げようにも右足が動かない。

痺れきった感覚に痛みは無かったが、吹き飛ばされてできた深い傷が彼の視界に映る。

眼を瞑り、諦める。

自分の命を。

しかし、またもや彼は誰かに突き飛ばされる。

紙一重で押しつぶしから逃れることができ、荒野に彼は残された。



やっと開けられた眼、やっと右足に灯される激痛。

「ユウカ・・・?」

呟いてみたが、返事は無い。

眼を開けても、そこに広がるのは白い砂埃だけ。

「ユウカ・・・?ユウカ、どこだ。返事しろ。俺は足がやられ・・・」

どこにも、いない。彼の最愛の人物はもうこの世のどこにもいなかったのだ。

立ち上がることも出来ず、辛うじて動く左足で土を蹴り、這う。

ザフィリオが360度見渡そうとも、そこにはユウカの姿は無い。

「ユウカ・・・?」

最後に呟いてみたが、彼をかばった彼の妻の返事が帰ってくることはなかった。

―――こうして“災厄”は、幕を閉じた。

北方のひとつの街が消え、数多くのハンターが命を奪われることとなって・・・

ハンター、否、人類の敗北だった。

そんな中ジンは、両親の帰りをいつまでも待っていたという。

初めて降る雪を静かに見ながら。



雪はすぐに止んだ。




ジンが父の口から母の死を伝えられたのは、それから4年後のことだった。

4年を経た涙が頬を伝う。

「母さんが死んだことはとっくに分かってたよ。父さんは嘘が下手だからな・・・」

複雑な顔をする父に、ジンはこう続けた。

「俺は母さんを誇りに思う。もちろん父さんもだ。俺ももう14だ。」

いつか見た瞳に、懐かしさと安堵を覚える父。

「――俺に太刀を教えてくれ。」


青鈍の瞳は真っ直ぐに、同じ色をした父の目を見つめていた。







Chapter1-2『ボルカ村の兄弟』

モンスターハンター二次創作小説『炎の山の狩人たち』
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人工涙液の美容にとは

目が乾燥するドライアイの治療などに用いられる、涙に似た成分でつくられた目薬で、不足する涙を補うためこまめに点眼する http://tonneru.victoriaclippermagazine.com/

| | 2008/10/20 16:01 | URL | ≫ EDIT















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